師走。
師匠、転びますよ!
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
駄目な子と是非呼んでください(え
紅葉君と薫子ねえのやつ、続きね。うん。
すっげーぐだぐだ長いんだ…。いや、本気で長いんだ。
良かったら、読んでやって下さいませませ。
帰宅した男達が見たのは、何とも不思議な光景だった。
「まぁそうなの?」
「うんっ。最初は苦手だったんだけど、飛鳥さんが呑みやすいカクテル作ってくれてね。」
どうも意気投合したらしく、紅葉と薫子が楽しげに言葉を交わしている。
それを、紙袋を抱えた飛鳥と眉間の皺を深くした春之丞は見つめた。
ちらと視線を交わし合い、そっと飛鳥が声を掛ける。
「紅葉君、」
「あっ!こんにちは、飛鳥さん!ごめんなさい。勝手に入っちゃって…。」
「今日は。良いんだよ。寧ろ、留守にして悪かったね。」
駆け寄った紅葉に微笑むと、つられるようにして笑う。
春之丞さんも今日は!と見上げられ、黒い塊は同じく小さく返した。
しかし。
「お帰りなさい。春之丞さん、飛鳥。」
問題はこちらなのだった。
まだ座ったまま、彼女、薫子は言い放つ。
取り敢えず御座りになったら、と白い手が促す。
気品溢れる美しい動作。
「ああ、本当に…。薫子、どうして此処にいるのかな。」
「…家の者達が、煩わしい程に探しておりました、が。」
揃って溜息を吐く。
小首を傾げる紅葉を座らせ、取り敢えずは各々腰を落ち着けることとしたのだった。
何と云っても、簡単に済むことではなさそうだ。
って、ことは…。
「お家の人に言わないできちゃったのっ?それじゃ心配しちゃうよ、薫子ちゃん!」
若く軽やかな声が言う。
本気で心配しているのだろう、フレアレッドが揺れた。
何と無く、紅葉の言葉に違和感を覚えながらも飛鳥は囁く。
「まあ…ね。それで慌てて雪消に連絡が着たのだろうから。」
あまりに過保護だと思うが。
しかしながら、紅葉を驚かせたとはいえ、勝手に店の鍵を開けたとはいえ、午睡を楽しんで大人しくしていたのは奇跡的だった。
と、春之丞も飛鳥も内心思う。口には決して出さないが。
「ごめんなさいね、春之丞さん。でもね、一応伝えて来たのよ。」
優雅に紅茶を口に運び、薫子は薫子で小さく溜息を吐いた。
ピピちゃんに、飛鳥のところへ行って来るわね、って。
それを聞いて、ついに春之丞は額に手をやり沈んだ。
「ピピちゃん?」
「……背黄青鸚哥に無茶を振らないで下さい。」
紅葉の疑問は春之丞の一言で解決した。
隣から囁かれた"随分ズレた考えだろうね。"という言葉に"薫子ちゃんて可愛いんだね!"と心の広い感想を紅葉は持つ。
本当に優しく出来た子だと、そう思うのは必然である。
「あ、でも春之丞さん。あの、関係ない質問して…いい?」
そっと窺われ、春之丞は視線だけで頷いた。
普通なら睨まれたかと勘違いされるが、紅葉はそれがデフォルトと既に知っている。
「さっきから俺、気になってたんです。なんで…敬語なの?薫子ちゃん、妹さんでしょ?」
まぁ。と薫子は驚きの表情を作り、飛鳥が予想していたように堪えられないとくつくつ笑う。
春之丞はそれを睨み付け、うなだれた。
え、え?と自分が何か可笑しなことを言ったのだろうかと紅葉は三人を見る。
「違うわ、紅葉さん。」
優しく紅葉を見つめ、薫子は笑んだ。隣の春之丞に腕を絡める。
傍から見れば、兄を慕う妹。だが。
「私は、春之丞さんの姉よ?だから敬語を使ってくれているの。」
構わないと言っているのだけどね。え、と紅葉は一瞬固まる。
「紅葉君?」
「……………ぇええ!?お姉さんっ?」
驚きの声は、開店前の店内によく響いた。
--今日はもう帰りますよ。有無を言わさず立ち上がる。
と、薫子は春之丞さんが言うなら、なんて笑った。
立ち上がり、当然のように春之丞へと小さな手を伸ばす。
そして春之丞は春之丞で、慣れた動作で薫子を抱き上げた。
それを見て、紅葉はまだ信じられない心持ちだ。
薫子さん、と呼び直したら、そのままでいいわと言われた所為もあるだろう。
「…今日は助かった。ゆっくりして行くといい。」
開いた右手で紅葉の頭を軽く撫で、低い声が呟く。
「紅葉さん、有難う。楽しかったわ。」
良かったらまたお話ししましょうね。と薫子が手を降る。
「うん!二人とも、気をつけてね。」
と、明るく元気に、紅葉は手を振り返した。
またそのうち会いたいな、薫子ちゃんに。なんて心の中で思いながら。
PR
この記事にコメントする